紋章上絵(もんしょううわえ)

ページ番号1001990  更新日 平成28年1月24日

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国選択無形文化財(記録作成等の措置を講ずべき無形文化財)

写真:紋章上絵 丸に違い鷹羽 

選択無形文化財とは「記録作成等の措置を講ずべき無形文化財」であり、指定文化財とは異なる。
国の選択基準は次のように定められている。
工芸技術関係 陶芸、染織、漆芸、金工その他の工芸技術のうち我が国の工芸技術の変遷の過程を知る上に貴重なもの。

名称
紋章上絵(もんしょううわえ)
選択
昭和50年4月23日
種別1
工芸技術
種別2
染織
継承者
紋章上絵保存会会員 小林 芳夫

紋章上絵とは、いわゆる紋付の紋を手描きする技能である。

紋は今日一般に冠婚葬祭の和装式服、七五三の祝着、宮参りの初着等に用いられるほか、伝統の諸芸能、茶華道、神道、相撲等の各界の装束、衣裳にもかなりの需要がある。
上絵技術は生地用途により色地、黒地、摺込、漆紋、切付紋に大別される。いずれも紋型紙彫刻、面相筆運筆の技術を必要とするが紋の形に対する感覚も非常に重要である。
現在技術者は東京、京都に多いが全国的にも広く分布している。後継者は個々の工房に就職して技能を修得し約7年で独立するが、完全な技能修得には10年以上要するのが現状である。
昭和40年頃から写真印刷等の簡便技法が進出を始め、これに対して伝統技術者結束の機運が生じていた。昭和50年に至り手描専業者の全国組織が結成された。

保持団体(関係技芸者の団体)の名称:  紋章上絵保存会
(注:文化庁ホームページより)

日本の紋章は、約5千種以上と言われ、その紀元は平安時代まで遡ると伝えられる。
当初は公家や武家の紋章であったものが江戸時代の前期には家紋が完成し定着し、衣服にも紋をつけるようになった。又、屋号や商標としての意匠も多様化され暖簾等にも使用されるようになった。
家紋が一般に広く用いられ、紋付羽織が普及するようになる江戸時代の中頃には、紋章上絵師が専業として成り立ったと考えられる。

桐生市で、三代に渡り紋章上絵師を続ける小林芳夫氏は群馬県内で唯一、紋章上絵の技術を継承する職人である。
芳夫氏の祖父芳次郎氏は、東京に生まれ牛込神楽坂の親方の下で修行し独立を果たす。その後も東海道の各地を訪れ技術を磨き、刺繍職人と供に織物の産地桐生を定期的に訪れ仕事をする中で、大正の初めに桐生に定住した。
芳夫氏の父啓祐氏は幼少時より、父芳次郎氏に師事し、昭和の初期に東京日本橋の上絵師の元で半年ほど修行して帰郷する。その1年位後には藤沢の上絵師の元で更に半年ほど修行したのち帰郷して父の元で技を磨いた。
啓祐氏の長男である芳夫氏は、父の元で技を受け継ぎ、現在に至っている。

紋章上絵の用具と工程

写真:紋章を描くのに使うヘラ、小刀、墨など

紋章上絵の用具

分廻し(ブンマワシ)と呼ばれる和製コンパスや様々な形のこて等、作業に特化した専用具である。
直線を引く際に面相筆と供に持ち定規に沿わせる丸棒、型を切り抜く手製の小刀、刷毛等の染織用具も年季の入った職人の道具である。
用具が乗る黒い板は、盤板(バイタ)と呼ばれる紋章上絵の作業板で主に桜材の一枚板が用いられる。

下絵(分廻しによる紋割り)

写真

専用の型紙に直線を引き、分廻で均等に弧を描き下絵を付ける。

紋型彫り

写真

下書きにそって小刀で紋を切り抜いてゆく。

擦り込み-蒸し・定着

写真

石持(コクモチと読む紋を入れる円形の白抜き部分)に型紙を置き、刷毛を用いて染料を刷り込む。
刷り込みの後、蒸気により染料を定着剤等で落ち着かせる。

線描き-仕上げ

写真

刷り込んだ紋に細部に面相筆墨で線描きする。直線には条規、曲線は分廻しを用いてじかに書き込む。
線描きの後、樹脂加工等にて仕上げ作業を行う


明治頃より紋の大きさは、男物で約3.8センチメートルであったが現在はやや小ぶりな3.6~3.7センチメートル程である。女物は2.1~2.2センチメートルで男物同様、明治時代よりは小さくなっている。
紋は背紋(せもん)1箇所、袖紋(そでもん)2箇所、抱紋(だきもん)2箇所の5箇所が正装の紋とされ、位置は、着物、羽織、産着などそれぞれに異なる。
紋章上絵の技法は、生地・用途により様々であり、黒地の着物や羽織に黒で紋を入れる黒地、白い丸の無い紋を黒地に入れる丸なし紋。色無地の着物や羽織に白抜きした紋を入れる色抜紋。色地の着物、羽織などの石持に地色で紋を入れる色入紋。別の生地に紋を入れ切り抜いて着物や羽織に紋を縫い付ける切付紋。白の麻布や薄色の生地に黒で紋を刷り込む摺込紋。摺込み紋を墨でなく色を刷り込んだ色摺込紋。摺込紋の上に漆を塗った漆紋等に大別される。
注:参考資料 群馬県無形文化財緊急調査報告書 群馬県教育委員会編 
手書き紋章 昭和58年9月15日発行

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