【移住者インタビュー】黒保根町CASE.6 多和田さん

ページ番号1022107  更新日 令和5年9月28日

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多和田さん一家の写真

  • 家族構成 多和田圭一、七七子、理澄
  • 移住年月日 2003年6月
  • 移住前居住地 千葉県松戸市
  • 移住前職業 大学生
  • 現在の職業 花卉生産
  • 住居の取得方法 賃貸(戸建て、のちに所有)

黒保根に来るまでの人生を教えてください。

圭一さんの写真

圭一さん)岐阜県の垂井町で生まれました。中学2年生のときに、農業関係の品種改良を志して、農林高校、愛媛県の大学、千葉県の大学院へと進みました。妻とは大学院で知り合ったんですよ。
卒業後は、研究者の道は諦めて就職しようと思ったんですけど、なにぶん氷河期時代だったもので。難航しているときに、「さかもと園芸さん(黒保根町にある花卉園芸農家)で研修をして、花卉生産農家にならないか」っていう誘いをもらったんです。
さかもと園芸さんてすごいところなんですよ。先代の社長が品種改良でミセスクミコっていう超有名なアジサイを世に出したんです。僕は高校時代から新聞等で存じ上げてたんで、そこで研修勉強できるんだと胸を弾ませました。
それでさかもと園芸さんのところに研修で来たのが、黒保根に来るきっかけです。
花卉生産農家として独立するため、黒保根村役場に相談して、いろいろな人に指導を仰ぎながら、ここで事業をスタートさせることができたんです。26歳になる年でした。それからちょうど21年になりましたね。
最初の10年はほとんど赤字で、よく乗り切ったなって自分でも思いますよ。

七七子さんの写真

七七子さん)出身は秋田で、父親の仕事の関係で熊本、盛岡と移り住みました。
大学卒業後、農業関係の研究所に勤めたのですが、そこで元上司の勧めもあり、大学院に進学しました。
夫が黒保根に来た年は、私はまだ学生でしたが、気づいたら黒保根にいました(笑)

お二人とも、自然と黒保根に行き着いたかんじですね。

シクラメンの世話をする圭一さんと理澄くんの写真

圭一さん)他のところは検討してなかったですね。仕事を決めたら黒保根になりました。
あと実際のところ、さかもと園芸さんの品種を使わせてもらってるのが多いので、やっぱり師匠が育種したのと近い環境のところでやりたかったという気持ちがありました。
師匠が選んだ花の大きさや形、本来の品種の特徴を出したいので。

黒保根で住んでいるお家はどのように取得したんですか?

圭一さん)ずっとお家を借りてたんですよ。
研修中に、黒保根で借りられる家を探してたら、「空いてるから貸してもいいよ」って言ってくれる方がいて、つい最近までずっと借りてました。
タイミングが合って、4年くらい前に購入させてもらいました。移住してから約20年ですけど、そのうち17年は借家です。
借りてた時からお中元やお歳暮は持って行って、いまでも年末にお花を届けたりしています。いいお付き合いを続けさせてもらってます。

この地域に馴染むまでのご近所付き合いとか、どうでした?

圭一さん)どこへ行くのもなじむのって結構大変じゃないですか、最初って。
例えば…道路愛護(※道路愛護…春と夏にある、道路清掃活動。日曜日の朝に各地域で集まって、草刈りやごみ拾い等をします。)があるので、そういうのに参加して近隣住民とコミュニケーションをとるとか。
これは組合(隣保班)に入ってなければ出る必要もないんですけど、やっぱりそういうのには出たほうがいい。
道路愛護はどっちにしろ、みんなで使うものはみんなで綺麗にしようよっていう考えでやってることだし。参加するだけでも「出ててくれたんかい」って言ってもらえます。
そのうち、誰が何をしている人かとか、どんどんご近所情報が入ってくるようになります。同じ年代の子が近所にいるとかも分かって、横の繋がりができてくる。こういうことが本当に大切だと思います。
山の中だと、ご近所といっても物理的距離が遠いじゃないですか。どんどん人が減るのはもう間違いないので、お互い助け合える環境づくり、言い換えれば自分が住みやすい環境づくりを一度構築しておいたほうがいい。

移住ブームで地方に移住したいっていう人が増えてきてます。田舎は煩わしい近所付き合いしなくてもいいでしょって思っている人もいますよね。

圭一さん)そうそう、移住したいって人に伝えたいです、逆に近所付き合いは大変だよって。
そういうのをしたくないなら、たぶん別荘みたいにした方がいいと思うんですよね。借家にして、週末だけ、月に2回、夏の間だけとかっていう使い方にするとかね。
移住するなら、近所付き合い自体は田舎の方が意識的にやった方がいいんですよ。

ちなみに僕は消防団にも入ってます。
消防団に入ってからは、本当に黒保根のいろんな場所や人の情報が入るようになりました。
そこでできた先輩たちとのつながりで、学生服とか体操服とかのお下がりをいっぱいいただいたので、ほとんど買わずに済みました。
ほかにも、自分で事業をやってるんで、水道屋さん、電気屋さん、金属加工屋さんと知り合えたのもメリットです。
消防団って、特に都会の人が田舎に来ると、「強制加入、飲み会きつい、上下関係は厳しい」っていう印象が強いと思うんですけど、もう全然そういうことは無いですよ。僕なんか最近ちょっと仕事が忙しくて行けなくても、「夕飯だけでも来ればいいがね!」って誘ってもらったり。
だから、自分が出れる範囲で済むんで、そういった地域活動には積極的にというか、やっといた方がいいと思います。

今まで、黒保根に来て出て行っちゃった人もいますか?

圭一さん)冬の厳しさが合わなかったっていう人もいたし、やりたいことがいっぱいあって、逆にそれが足を引っ張って続かない人もいました。
農業で暮らせると思ったけど結局それだけで暮らせなかったっていう人もいましたね。農業は特に、軌道に乗るまでの数年は蓄えがないとやっていけない。
あとは、そもそも近所付き合いが駄目だった人も。近所付き合いしないと周りの目も厳しくなっちゃうんですよ。ちょっと変わり者扱いされちゃう。

過去の町民運動会の写真

町民運動会、年2回の道路愛護、地域でのお祭りが1、2回…くらいだから、2か月に1回程度、行事に出ればいいくらいなんで、それをちゃんとこなす。日曜日の半日、使っても1日だから。
ちょっと地域のことを知ろうっていう軽いノリでね。特にそういうのが苦手な人は、慣れるまで、最初だけちょっと大変かもしれませんが。

黒保根独特の慣習だなって感じることはありましたか?

圭一さん)道路愛護はよく挙がるけど、僕は全然そうではなかったです。
実家では水路の清掃、川の清掃というのがあったので。田んぼがあったから、水路まわりの掃除は大事で、みんなでするんですよ。道路愛護はあまり聞かない名称ですけど、空き缶拾いとか道路清掃はまちなかでも時々ありますよね。
あと町民運動会は黒保根町民みんなでやる運動会なので、これは独特だと思います。
一応選手に選ばれた人が出るんですけど、まあ一番若い衆にお鉢が回ってきますよね(笑)
リレーになるとね、10代から60代まで選手が走りますよ。

七七子さん)私はそれはもう、いっぱいありました。
父親が公務員だったので、生まれたときからずっと官舎暮らしでした。だから、ちょっと普通の地域とは違ったのかもしれません。
組合って何?でしたし、へえっていうのは結構いっぱいです。

黒保根に住んでいて困ったことはありますか?

圭一さん)自然が豊かすぎるがゆえに、やっぱり不便ではあると思うんですよね。
便利を求めるなら絶対都会や街場に住んだ方がいい。

七七子さん)お歳を召してから、余生をここでっていうのは運転できないと厳しいです。都会の方が病院も近いし、どう考えても便利。ここだと電車だって本当にもういつなくなるか分からない状況になってきてますし、診療所だって毎日ではないし。

圭一さん)僕が黒保根に来た時、この組合も14軒あったのが今7、8軒しかない。20年後にさらに半分になるとすると、3、4軒になるかもしれない。そうなると、まばらすぎて困った時の助け合いができない環境になっちゃう。人口減で行政もアップアップしてるだろうから、細かい対応もできないんじゃないかな。
でもこれは黒保根だけが陥っている状況じゃなくて、桐生市、群馬県、日本中で起こりうることなんで、そうなったときにどうしたらいいのかっていうのは、ここに住んでいる僕らも考えていかなきゃいけないと思います。
人がいないと、伝統芸能の存続も危ういんだよね。獅子舞(前田原地区、涌丸地区で行われる、子どもたちによる舞)みたいな。

過去のささらの写真

ささら(涌丸地区の獅子舞の名称)もコロナで中止になって3年経つ。
もともとの踊り手は子どもだったんですけど、少子化で大人になっても踊るようになった。でも、舞には笛と太鼓っていう音頭が必要なんですが、もうコロナで3年練習してなくて、音頭取りはみんな70歳以上。リズムが合わないと思うんですよ。
ささらは次にまたできるかどうか…。

黒保根のいいところは?

秋の黒保根の写真

圭一さん)自然の豊かさに奥行きがあると思います。例えば紅葉とか雪でも、四季の移ろいに風や空気感、人の動きが合わさって、一日たりとて同じ日はないです。
息子が小学生のときはバス停まで一緒に歩いたんですけど、毎日毎日、何かしら違うところに気付くんです。
同じ道を歩いていても、今週はイチョウの銀杏の実が落ちてきたねとか、うわあ蛇が出た、もうそんな時期なんだねとか、風が今日は厳しいよねとか、誰々さんが草を刈ってくれてありがたいねとか。そういういろんな小さい気付きができる。

理澄くん)道の草を刈ってくれた人に会ってお礼したら、こんにゃくをもらいました。

圭一さん)熱心に道路清掃をしてくれてる人がいるんですよ。草がないと歩きやすくて。
だから去年シクラメン持ってお礼しに行ったら、「そんなこと気にしなくていいよ」なんて逆にこんにゃくとか野菜をくれたんです。
そういうちょっとしたやりとりが嬉しい。

七七子さん)カモシカを見たりもします。ちょっといいな、というか、黒保根ならではだなっていう感じですかね。なかなか街中じゃ出会えないから。

理澄くん)街中で見たら大ニュース!

圭一さん)黒保根にカモシカいるよって言ったとき、そんなところにいるわけないって街中の人に言われたもんね。

七七子さん)初めてカモシカを見たときのことは、本当にまだ鮮明に覚えてますよ。息子がまだ保育園だったころ、雪がちょっと降った日、近くの橋のところ。川向こうで何か動いたなって見たらカモシカがいて。カモシカ見た、カモシカ見たってふたりして大騒ぎ(笑)

圭一さん)あと黒保根は山だから普通の鹿・猿はもう飽きるほどいる。

七七子さん)街中の知り合いと山にいる動物の話になったとき、大抵の人は動物園で鹿や猪、猿とかを初めて見るのを、うちの息子はそれよりも先に野生のを見てるんですよね。

理澄くん)猪は遠目から、あと檻に引っかかったやつとかだけど。

圭一さん)キツネ・タヌキも出ますよ普通に。あとハクビシンは見たことないけど檻にかかったりするらしいですね。野生の熊も見たことがあります。

七七子さん)桐生市の注意喚起メールで「獣に注意!鹿が出た、猪が出た」って来ますけど、うちの庭にもきっとしょっちゅう出てますよ。

圭一さん)自然が豊かすぎるよね。豊かじゃなくて、豊か過ぎちゃってね、困っちゃうよね(笑)

和やかな一家の写真

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