上の湯【桐生市商業者情報発信サイト】

ページ番号1024287  更新日 令和6年10月31日

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事業内容:一般公衆浴場(銭湯)
キーワード:まちなか店舗リニューアル・事業承継支援事業補助金

写真:店舗外観

二人三脚の再スタート

写真:店を切り盛りする津久井夫妻

 津久井夫妻(夫:篤さん 妻:美紅(みく)さん)が先代の祖父母(祖父:笹倉幸一さん 祖母:文子さん)から「上の湯(うえのゆ)」を引き継いだのは令和3年7月のこと。
両親が共働きだったこともあり、幼少期を母親の実家である上の湯で過ごした美紅さん。幸一さんの体調不良をきっかけに突如休業となった上の湯を目の当たりにし、「大切な思い出がつまった上の湯を守りたい。再開を待ち望む常連客のためにもどうにか店を残したい」と強く思うようになったそうですが、銭湯はおろか店舗経営の経験や知識もない美紅さんにとって、承継という選択は簡単なものではありませんでした。
 そんな時、美紅さんの背中を押したのが、当時お付き合いしていた篤さん。大の風呂好きだという篤さんは、美紅さんから上の湯の話を聞きつけると、興味津々で早速入りに行ったそうで、「静かで落ち着いた雰囲気が印象的で、じいちゃんばあちゃんの家に遊びに来たかのような懐かしさを感じる銭湯でした。それっきりその魅力に取りつかれてしまいましたね(笑)」と上の湯に魅せられた当時を振り返ります。「いつか継げたらいいね」と冗談交じりで話すこともあったそうですが、「まさかこんなに早いタイミングで実現するとは思っていませんでした」と篤さん。共に覚悟を決め、幸一さん、文子さんから承継の了承を得ると、約5か月間の休業を挟みながらも津久井夫妻による「上の湯新章」が幕を開けました。

苦難を乗り越えて

写真:浴槽

 先代から教えを授かることも、風呂屋仲間に助けを求めることもできなかった当時はまさに手探り状態。そんな日々の中で、「風呂屋のイメージががらっと変わった」と篤さん。「当初の勝手なイメージは『番台に座りながら常連さんとゆったり過ごす仕事』でしたが、やってみればほとんど肉体労働。浴室の清掃をはじめ薪の調達、営業中は温度調整のためにボイラー室に籠りきりなんですよ」と語ります。特に、「お客様が日ごろの疲れや汚れを洗い流す浴室は常にきれいにすること」は先代の教えとして文子さん伝いに聞いていたようで、掃除については絶対に手を抜かないそうです。
 承継後、新たな命を授かり4人家族となった津久井家。離れた住まいから上の湯の居住スペースへ生活拠点を移したことで少しは生活にゆとりができたようですが、二人のお子さんの面倒を見ながらの営業は津久井夫妻の体力的にもギリギリです。定休日になっても落ち着くことはできません。美紅さんは育児を続けながらたまりにたまった家事に追われ、篤さんは釜と煙突の掃除で再び煤(すす)まみれになります。そんな多忙な日々を過ごすお二人ですが、休日の夜だけは家族そろってお風呂に入り、ごはんを一緒に食べるようにしているそうです。「短い時間ですけど、一週間の疲れも吹き飛ぶほどの力を与えてくれる。そんな時間です」と嬉しそうに話すお二人でした。

受け継がれるもの

 「壁全面煤だらけで真っ黒のボイラー室は上の湯の歴史そのものです」と篤さん。代々、湯を沸かしてきた店主達が培ってきた苦労の結晶。そんな壁面の一部に、先代がチョークで記録した文字が薄れながらも残っています。「いつ何の工事をしたか」程度のメモ書きしかそこにはありませんが、「どこか見守られながら教えを受けているような不思議な気持ちになりますね」と篤さんは話します。

写真:ボイラー室のメモ書き

写真:靴箱

 年上と常連客ばかりのアウェイな雰囲気をイメージしがちな銭湯。ところが、多くの人から「上の湯の常連さんは優しい」という声を貰うほど、常連さんは大変面倒見が良く、勝手がわからない一見さんにも優しく教えてくれるそうです。「代々常連さんとの間で築き上げてきた上の湯の伝統を日々感じています」と美紅さん。
 そんな上の湯は、長女の望愛(みお)さんにとっても大好きな場所。お客さんとのコミュニケーションを欠かさず、特に仲の良い常連さんとは一緒にお風呂に入り、帰り際には「またね」と言葉を交わすほど仲を深めているとのことで、これには美紅さんも「いつ仲良くなったの!?(笑)」と驚きを隠せなかったと言います。お客さんあっての上の湯であることを既に熟知しているかのような活躍をする望愛さんは、上の湯の未来を担う若女将なのかもしれませんね。

アットホームな銭湯に

写真:休憩スペース

 県内の信用金庫で前職時代を共に過ごしたというお二人ですが、店舗経営となると全くの素人で右も左もわからなかったとか。そんな時、親身になって相談に乗ってくれたのが桐生商工会議所やよろず支援拠点でした。SNSの運用方法から「桐生市まちなか店舗リニューアル・事業承継支援事業補助金」の活用に至るまで、多岐にわたる支援を受けることができたそうです。
 そんなお二人が目指す今後の上の湯の姿は、「家族で行ける銭湯」です。家庭ができ、家族でゆっくり過ごせる場所や時間の大切さに気付いたという篤さんは「家族旅行の定番で“非日常”が味わえる温泉とはまた違いますが、それに負けない居心地を“日常”的に提供するアットホームな銭湯を目指していきたいですね」と話します。家族で営業している温かさを売りに、個人だけでなく家族単位のお客さんを呼び込みたい上の湯。「今、上の湯に来てくれている子どもたちが将来、自分たちの子どもを連れてきて、『昔、ここに何度も通ったんだよ』なんて会話をしてくれたら、もう最高ですね!」と最後に笑顔で語っていただきました。
 理想の上の湯を思い描く二人のストーリーはまだまだ始まったばかりです。

編集後記(職員から一言)

写真:浴室

 錦町ロータリーの路地裏にある上の湯。藤の花木に彩られたのれんをくぐると、歴史を感じる靴箱や飲み物・駄菓子コーナーが目に入り、どこか懐かしいレトロな空間が広がります。
 入職してまだ数年の筆者ですが、実は初めて訪問した事業者さんが、そう、津久井夫妻でした。緊張する私に優しく丁寧に接してくださったお二人の温かさは今でも鮮明に覚えており、今回の取材でも変わらぬ人柄に惚れ惚れしてしまうほどでした。お風呂も間違いなく一級品。長時間の肉体労働を終え、上の湯でひと風呂浴びてから繰り出した桐生八木節まつりほど爽快な日はありませんでした。日々篤さんが磨き上げるタイルや壁面の輝きと、窓から差し込む眩しい日差しが相まって生み出す幻想的な浴室空間で浸かる湯は、その日の疲れを完全に忘れさせます。優しさと温かさであふれる「上の湯」であなたも心身ともに癒されてみませんか?

店舗情報

店舗名
上の湯
所在地
桐生市錦町1-8-11
代表者
津久井 篤
事業内容

一般公衆浴場(銭湯)

電話

0277-43-8656

営業時間

15:15〜21:00

定休日

月曜日・火曜日

注:8がつく日は営業

※営業時間や定休日は、情報掲載時より変更されている場合もありますので、ご確認の上ご利用ください。

二次元コード(インスタグラム)

店舗地図

地図

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