常広寺の弁財天堂
指定文化財について
- 名称・員数
- 常広寺の弁財天堂(じょうこうじのべんざいてんどう)1棟
- 指定年月日
- 昭和29年1月14日
- 区分
- 桐生市指定重要文化財(建造物)
- 所在地
- 群馬県桐生市新里町山上291-1
- 構造・形式
- 木造平屋建、一間社、寄棟造向拝付、銅板葺
※創建時は杮葺もしくは桧皮葺と考えられる。
桁行、梁間共に2.1メートル 面積 8.2平方メートル - 建築年代
- 江戸時代中期
天井絵の作者、様式等を根拠とする。(推定)
弁財天堂の概要
弁財天堂は、常広寺総門から本堂へ向かう参道の西側(山上城跡東側)に東面して建つ小規模な建物で、現在は埋め立てられているが池の中州に建てられていたものと考えられる。
建物の構成は、身舎(もや)桁行、梁間とも2.1メートルの方形の前面に1.06メートル出の向拝と、背面に巾1.36メートル、奥行き1.06メートルの仏壇が突出する。正面と側面の三方に縁がつき、正面に二段の階段がつく。
屋根は寄棟で平成20年度の保存修理工事の際に建設当初の小屋組が確認され、当初に倣った形の銅板葺きに改修された。
建物の詳細
向拝部正面の虹梁上には、龍の丸彫りが向拝柱の裏から正面に回り込み、左右一対の顔が正面の木鼻部分となっている。天井一面には飛天が描かれているが経年等により薄れ判別が困難である。
身舎は1間四方で円柱を隅に置き、入口は両折戸で交差部に飾り金具が付く。虹梁上部の欄間には透彫の彫刻が付き、南北の胴上部の欄間には尾長鶏と雲が透彫りされている。
内部の縦羽目板と天井板には絵が描かれているが、これも経年により薄れわずかな彩色と線描のほか判別が困難となっている。天井の龍も劣化が激しいが、狩野派の流れを組むといわれる法橋栄駿の落款が認められる。
仏壇部は床を上げ浮彫りの付く彩色された虹梁と円柱の袖柱の奥に設けられ、板壁と湾曲した垂木と天井板で囲まれる。
現在、本尊は本堂に安置されている。弁財天堂は小規模であるが、内外に精緻な彫刻が施され、全面に絵画や鮮やかな彩色が施された極彩色の建物であったことが伺える。
弁財天堂の歴史
元和4年(1618年)から元和8年(1622年)に住職であった四世天厳巽暁大和尚の代に建立され、十七世準鷹恵海大和尚の代、享和2年(1802年)に大修理が行われたと伝えられている。
当初は、柿葺もしくは桧皮葺であったと考えられ、時期不明であるが茅葺屋根へ、その後短い期間であるが鋼板葺へと変更されている。平成20年度に実施された保存修理工事では、屋根形状を含む銅板葺への変更ほか縁廻りの解体修理などを行った。工事の際に2枚の棟札が確認され、明和9年(1772年)弁財天堂十五童子の墨書ほか、享和2年の大修理を裏付ける現十七世準鷹恵海大和尚の墨書も認められた。
弁財天像
本像は八臂の坐像で各々に得物を持ち、頭頂に鳥居を付けた宝冠ととぐろを巻いた白蛇の宇賀神をいただく宇賀弁財天の形態をとる。円形の水盤を模した台座の上に、木の根を据えて眷属である十五童子を配し、頂部の祠に見立てた窪みに奉られている。
弁財天は、古代インドで信仰されていたヒンドゥー教の聖なる川の化身、農業の女神サラスヴァティーが仏教に取り込まれ仏となり、日本では神仏習合の流れの中で神道と一体となったものである。音楽と知恵の神として信仰されるようになり、鎌倉時代以降では七福神の一員としてて宝船に乗り利益をもたらすものとなった。
像容は、二臂像と八臂像に大別され、二臂像は琵琶を抱え、バチを持って奏する音楽神の形をとるものが多い。八臂像は戦勝神としての姿である八臂の各々に得物を持つ有様から本像の様に宝珠や宝物庫のカギを併せ持つ福徳神的要素の強い神へと変って行った。
曹洞宗天正院赤城山常廣禅寺について
天正18年8月、関東8カ国の領主となった徳川家康は江戸に入府し、上野国支配の拠点、厩橋(前橋)には平岩親吉が使わされた。旧山上領は、大胡城主牧野康成、伊勢崎城主稲垣平左衛門らの領地として分割されたほか、幕府の直轄となった。
前橋城主となった平岩親吉は、山上氏や領民を祀り供養するための寺院建立を発願し、山上城の本丸東側に山上氏ゆかりの真言宗山上集寺を改宗し、曹洞宗天正院赤城山常廣禅寺として開創したと伝えられる。常廣寺は、元禄の大火により全山消失、再建の後、大正の火災により堂宇が消失、昭和の初めに現在の建物が再建された。度重なる火災により、寺院や建物に係る詳細な資料は失われている。
※本文中では文化財指定名称の「常広寺」を使用しています。
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